小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)『知られざる日本の面影』によると、島根県松江の月照寺には大亀がいて、夜な夜な街を徘徊しては人を襲っていたそうです。
この日はあいにくの雨でしたが、濡れた石畳がいい雰囲気。
門のむこうには
鳥居と、廟
ここ月照寺は、松江藩主・松平家の廟所(墓)なのです。
ちなみに初代・松平直政は、徳川家康の孫にあたります。
梅雨時にはあじさいが咲き誇り、「山陰のあじさい寺」との別名をもつ月照寺。
シーズンには花見客でにぎわうそうです。
しかしあじさいの季節でない今日は、境内に人の姿はなく、静まり返っています。
雨に濡れた苔のにおいがあたりを包んでいます。
第6代藩主・宗衍(むねのぶ)公の廟所に、大亀はいました。
どーん!
いいお顔!
濡れた大亀は、生き生きと見えます。
今にも動き出しそう。
夜な夜な動き出しては人を喰らっていた大亀。
暴れまわる大亀を住職が諭すと、
大亀は涙ながらに訴えました。
「わたしにもこの奇行を止められません。貴方にお任せします」
そこで住職は、亡くなった藩主の功績を彫り込んだ石碑を大亀に背負わせ、
大亀をこの地に封じ込めたのでした。
封じられた後もしっかりと目を見開いている大亀。
何を見つめているのでしょうね。